植物の成長 (新・生命科学シリーズ)

陸上植物の進化の視点から，植物の発生過程を，遺伝子や植物ホルモンの働きで説明した読み物風の教科書。塚谷裕一氏が書評で本書を絶賛していたので読んだのだが，書評の通りで，腑に落ちるところが多く，読み通すことができた。200頁の薄さの割には最新の文献を多数引用している。内容が新しいだけでなく，考察が斬新で，レベルは非常に高い。手づくりのような素朴なイラストが多く，わかり易い。各章にコラムが載っていて，歴史的なエピソードが臨場感のある文で紹介されている。巻末に遺伝子など用語の略号と簡単な説明のリストがついていて便利。成長がテーマなので，光合成・代謝を扱っていないのは仕方がないとしても，光などの環境応答を扱っていないのは残念。シリーズなので，別に出るのかもしれないが。単一の著者による植物発生の教科書としては近年，類を見ないユニークな力作。植物生理を初めて学ぶ人に勧める。