『誤解だらけの〝イヌの気持ち〟』－『イヌのこころ』を科学する (ｚａｉｔｅｎＢｏｏｋｓ)

私の家には、子供の頃から犬と、ネコがいました。その数は、６匹の犬と３匹のネコ。複数の動物を一度に飼った訳では無く、いつの間にかなついて来た犬を飼ったり、その犬が何故か居なくなり、次に勝手に家に居着いたネコだったりです。子供だった私のポジションは、彼女や彼の中での位置づけが、どうだったかは分かりません。最近、シバの子犬を飼いだし、子供の頃、一緒に育った犬とは、全く違う動物だと言う事を知りました。日本犬を飼う難しさは、ある程度知っては居ましたが、シバは、違うイキモノでした。こだわりが強く、家の中を歩くにも、彼女（雌なので）なりのルールが有って、その「決め事」が多すぎ、プライドの高さとでも言うのでしょうか、ある事が有って、それ以来、「面倒臭い女だな」と、愛情を込めて呼ぶようになりました。（その、「面倒臭い女」が、可愛くて仕方が無いんですけどね）私が疑問を持ったのは、ペットショップの方、或いは、動物病院の先生、犬を飼っている人たちが言う、「かみ癖」の対処のやり方でした。ネットの情報も観ましたし、ブリーダーの方からも、育て方の参考書も貰いましたが、「かみ癖」の直し方については、何か違うと思えました。噛むのを止めさせる方法は、体罰を与えれば、簡単に覚えさせる事ができますし、「ご褒美」を与える方法も、何時かは止めなければいけません。「かみ癖」を止めさせる方法として、別なアプローチが有ると思いました。これは、簡単ではありません。体中に、数百ヶ所の傷を作りながらも、その傷跡を「彼女」に見せ、「ほら、お前が噛んだ傷だよ」と言うと、目をそらしたりしますが、私が寝て居る時に、一生懸命、傷を舐めているそうです。これが正しいことかどうかは分かりません。犬の知能が、人間の３歳程度だとすれば、３歳児に分かるようなアプローチをして見ようかと。犬が、人間との意思疎通の方法として、「噛む」と言うのが一つの表現方法ならば、徹底して、それに付き合って見ようかとの想いと言うか、「好奇心」とでも言うのでしょうか、徹底して「犬なり」に付き合って見たいと思ったからです。（「犬なり」と言うのは、私の造語で、競馬の馬を、馬に任せて走らせる「馬なり」から取りました）「彼女」が文句を言って来る時と言うのは、ほとんど決まって居て、そっと出かけた時と、別な部屋で、こっそり昼寝をした時なんです。（何かをこっそり食べた時もです）確かに、私がブリーダーさんから直接抱いて連れて来て、その後の面倒を見て来た為に、異常なぐらい「依存度」が高くなっていて、常に、「彼女」の視野にいなければ、安心できない様で、７、８ｍ先のトイレに行くときも、一声掛けないと、付いて来てしまう状態です。もう少し成長すれば、一人（？）立ちできるのでしょうが、今は、仕様が無いかと。最近は、「彼女」の考えている事が分かり始めたので、「噛み噛みタイム」は、かなり短くなりました。長文の経験中の事を書きましたが、今までに、沢山の方々が書いたマニュアルは尊重しつつも、自分なりの、白紙の育て方をしたかったのもありますし、動物同士が一緒に暮らして行くには、相手に対するアプローチの仕方が違うだろうと考えるのは、自然な発想だと思っています。この本は、藤田和生さんが、「研究論文」として纏められたのかも知れません。「犬の躾をする本では無い」と書かれて居るとおり、犬と言う動物の概念を見直す本だと思って購入しましたし、誰かが書いた、「コピペ」の本では無いものを、と思ったからです。「コピペ」だけならまだしも、マニュアルに寄っては、バラバラなのには閉口しました。しかしながら、犬を家族の一員として飼われる人たちの中には、楽しさが足りないと思うのも事実です。この本を購入するに当たり、何を求めるのかによって、評価が両極端になるかも知れませんよね。決して楽しい本では無いかも知れませんが、「面白い本」として、星五つです。この本を購入する前に、景山直美さんの、「柴犬式」を読みました。読み飛ばせば、３０分、１時間で読めるでしょう。また逆に、１週間でも読み切れないかと。連れ合いと、大笑いしながら読みました。開いた所から何度でも読み返せる楽しい本です。そう言った意味では、”イヌの気持ち”は、楽しむ本では無いのでしょう。但し、犬との付き合い方を考えるときに、「切り口」を変えて観る事も必用で、アプローチの仕方を変えると、全く違う反応が観られたり、違うアプローチで、同じ結果に導くのは、非常に興味深いものを得られる様な気がします。相手も生き物、こちらも生き物、ゲームでは無いので、リセットボタンはありません。で、あるならば、彼らや彼女らの育て方の攻略法も無いし、近道は無いと思いました。マニュアル通り育てれば、躾が出来て、芸もできるお利口さんの犬に育つでしょう。今は、必用な時以外、マニュアルは見ませんし、「犬なり」に育てています。「お手」、「おかわり」、「おすわり」、「伏せ」、「まて」、「よし」等は、一切教えてません。「お手」の必要性を感じないからですし、目を見て、「待ってろ」、と言えば待ちますし、「おちゃんこ」と言えば、「伏せ」状態か、「おすわり」状態で、「待機」状態になります。食事の時も、「ほら、食べなさい」と言えば食べ始めますが、何も言わなければ、そのまま待って居ます。その事を書いて居るのが、この本の、”イヌの気持ち”だと思います。寝て居る時に、ひとの頭を踏んづけて身体を超えて行く時は、バトルの始まりですし、背中の方から足先を回り、胸元に来る時は、身体に触れて欲しいときだったりしますが、バトルも、なでて貰いたいと言う仕草も、同じ「甘えの表現」だと思っては居ますが、そのスイッチが、どのタイミングで、どちらに入るのかは、その日の私の振る舞いに掛かって居る事は、大分前から分かって居ました。それは、私自身が、知らず知らずに、間違って作ってしまったルールであり、このルール改正は簡単では無く、不可能に近いものだと思っています。間違いだらけの”イヌの気持ち”は、犬を飼う前に読む本なのでしょう。犬を飼って、壁にぶつかり、「さて、どうしよう」となってから、読む本では無いのでしょう。しかし、非常に興味深い本だと思います。本というのは、専門的になればなるほど、つまらなくなるものですよね。逆に、専門的になればなるほど、一行に込められた意味合いが深くなるんだと思います。本と言うのは、読み手に取って、面白いか面白く無いかのどちらかです。私は、文学とか、純文学と言われる本を一切読みません。と言うより、読めません。読んでも、さっぱり面白いと思えないからです。直木賞作品はまだしも、芥川賞作品となれば、読むのさえ苦痛に感じます。何万冊かの「面白い本」を読んで来ましたが、”イヌの気持ち”は、その一冊になると思います。