フルトヴェングラー (岩波新書 黄版 282)

当書は、戦後最大の（当時は東大教授が何でも最高と言われていた）丸山氏が、対談があると言うことで、かなり昔に買っていたところ、思うところ有って、最後まで読んだ。音楽論としての「フルベン」（丸山氏が嫌いな言葉らしい）は、深い洞察を持って、タクトを握っていたことを理解でき、音楽付きの空騒ぎレベルという意味では、宜しいのでは？…と思う。が、政治と芸術の分離を努力したと養護しても、所詮、年寄り達の「死人養護」に変わりがない。しかも、丸山氏がその対談に同席しているという設定は、非常に微妙である。フルベンは、基本的に人間関係については「権威主義で、優柔不断」という、まさに職人気質ではバランスを取ることの難しい、「性格」であろうし、戦争という異常事態の中にあって、その性格はなおさら、困難であっただろうと思う。いずれにせよ、今は「目に見えない資本主義のどん底」にいる。フルトベングラーの処世術を教訓としたいし、高橋是清の生き方にポジションを取るか、総ての若者に参考にして欲しいと思う。次の図書は、それをフルベンから時代へと拡大させた書物である。参考とされたい。カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)